システム開発を成功に導くためのステークホルダーとの関わり方とは?プロジェクト成功のためのステークホルダーマネジメント【DX推進のTips】
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【 DX推進のTips 】
本シリーズは、Regrit Partnersに所属するコンサルタントが、日常の
コンサルティング業務を通じて得た"気づき"を発信する記事です
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目次
- 1.システム開発が失敗する理由
- 2.ステークホルダーとステークホルダーマネジメントとの関わり方
- 3.ステークホルダーとの良い関係の築き方
- 4.プロジェクト成功のために心掛けているポイント:自分の味方を見つける
1.システム開発が失敗する理由
システム開発プロジェクトを成功に導くことは簡単ではなく、2018年の日経ビジネスの調査によると、実に47.2%のプロジェクトが失敗したとのことである1。その理由としては「プロジェクト開始時にお客様が望んだシステムにならなかった」、「カットオーバーが延期した」、更には「スケジュール通りに進捗した一方で、開発ベンダー側に多大な残業が発生している」などの事例を挙げることができる。
それでは、システム開発プロジェクトが失敗する原因はどこにあるのだろうか。その原因は様々であるが、代表的な例としては、要求・要件定義時に発生したユーザと開発ベンダー間の見解のギャップが埋まらないまま開発を進めてしまうことや、開発ベンダー側のプロジェクトメンバーの技術力不足により要求事項を実現できないこと等があげられる。その中でも、筆者が決定的な失敗の要因の一つと考えるのがステークホルダーマネジメントの失敗である。
2.ステークホルダーとステークホルダーマネジメントとの関わり方
そもそもステークホルダーとは、「利害関係者」を指す言葉で、システム開発プロジェクトにおいてはプロジェクトに影響を与える人物(群)を意味する。システム開発には数多くのステークホルダーが存在し、例えば「大企業の基幹システム刷新プロジェクト」では、PM(Project manager)、PMO(Project management Office)、エンドユーザ、経営層、システム部門、ベンダー(マルチベンダーの場合もあり)、更には連携先システムのユーザやそのシステムの開発チームなどが存在する。
ステークホルダーとのかかわり方については、「ステークホルダーマネジメント」という概念があり、PMBOKではプロジェクト・ステークホルダー・マネジメントを「ステークホルダーの期待とプロジェクトへの影響力を分析し、ステークホルダーがプロジェクトの意思決定や実行に効果的に関与できるような適切なマネジメント戦略を策定するために必要なプロセスからなる」と定義している。
つまり、各プロジェクトのPMやPMOはプロジェクトのゴールを達成することを目標とし、これらステークホルダーの期待値を把握することやアクションを促すように動く必要がある。そのためにも、ステークホルダーと関係を築き、適切な頻度で情報を吸い上げて、改めてアウトプットを伝える能力が求められる。
ステークホルダーマネジメントに失敗すると、本来必要な情報が手に入らなくなる可能性が高くなり、プロジェクトの失敗リスクが高まる。例えば、ユーザとベンダー間の意思疎通が滞り、要件に組み込む必要のある機能の開発が漏れることや、課題の発見が遅れ戻り作業が発生することにより、当初よりもコストの嵩む打ち手を打たざるを得なくこともある。
もし、ステークホルダー間でのコミュニケーションを頻繁に取ることができていれば、気になったタイミングでユーザに確認が取れ、要件漏れを防げていたかもしれない。プロジェクトが順調に進んでいる場合は、コミュニケーションに多少の難があっても支障は出ない一方で、大きなトラブルがあった際はその負の影響を克服するために多大な犠牲を払うことになる。
3.ステークホルダーとの良い関係の築き方
「ステークホルダーマネジメント」にはコミュニケーション力が欠かせないが、その一方で、全ての関係者と良好な関係をスムーズに築くことは難しい。なぜならば、アサインされるメンバー(あなた)も一人の人間であるし、ステークホルダーとの相性の問題や、時としてあなた、もしくはステークホルダーがコミュニケーションを得意としない場合もあるからである。しかし、上記のような問題があった場合でもステークホルダーから情報を引き出し、逆に情報を伝えることが求められる。このような状況に直面した際には、どのようにステークホルダーと関係性を築いていくべきか?
私がこのような場面に直面した場合は、その関係者との関係を維持しつつ、別の協力者を作ることを心掛ける。顧客内部または開発ベンダーのキーパーソンと密にコミュニケーションを取れる別のステークホルダーに協力者になることを依頼し、キーパーソンからの情報を取得する仕組みを構築する。本協力者は、別の表現をすると「スパイ」とも言える。
特定のキーパーソンとの関係構築に注力しすぎると、そのキーパーソンとの関係構築が上手く行かなかった際にプロジェクト遂行上で様々な支障が生じる。そのため、他の関係者をパイプ役にすることでそのリスクを回避する。急がば回れではないが、情報を得るためのアプローチは一つだけではないことを意識するべきだ。
4.プロジェクト成功のために心掛けているポイント:自分の味方を見つける
私の実体験を申し上げると、20代の時にPMOとしてアサインされた金融系の基幹システム開発プロジェクトで初めて協力者(スパイ)の重要性に気付いた。当プロジェクトでは、大規模開発のため20程度のチームのステークホルダーと様々な調整をする必要があった。その中でもあるチームの進捗が芳しくなく、どのように調整をすべきかとても悩んだ。
そのチームのリーダーはかなりご多忙で、気軽にコンタクトを取ることが難しかった。そこで私は、当リーダーとコンタクトを取る機会の多い別のチームの方を通し、件のリーダーの近況を適宜把握し、適切なタイミングでコンタクトを取るようにした。そうすることで、相手とのコミュニケーションがスムーズに行われ、取り組んで欲しいタスクを確実に進めて頂けるようになったほか、以降もコンタクトしやすい状況を確立することができた。
また、他のプロジェクトにアサインされた際も、顧客側のリーダーより社内情報(事業計画など)がなかなか共有してもらえない、決められた方向性について情報共有を頂けないというケースが度々あったが同様の方法で課題をクリアした。
直接的にステークホルダーと関係を築くことができるのが第一優先ではあるものの、必ずしもすべてのプロジェクトでうまくいくとは限らない。特に、PMOやPMになりたての際は、顧客側窓口となる方は役職付きかつ年上の方が多く、気後れしてしまうこともあるだろう。そのような場合は、自分の味方になりそうな人を見つけ、その人を巻き込んで調整を進めていくことを検討してほしい。閉じ切っていた扉が少しでも開く可能性はそこにある。
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