CRM/SFA導入後の3つの関門(第一関門編)【コンサルタントのインサイト】
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【 コンサルタントのインサイト 】
本シリーズは、Regrit Partnersに所属するコンサルタントが過去に
携わったプロジェクトの経験を横断的に俯瞰し、個別ソリューション
や産業に関する独自のインサイトを発信する記事です
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冒頭から残念なお知らせだが、日本情報システム・ユーザ協会の「企業IT動向調査報告書2021」によると日本のシステム導入プロジェクトの7割は失敗に終わったことが報告されている。さらにCRM/SFA導入に関しては7~8割のプロジェクトが失敗に終わると言われている。
システム導入プロジェクトには魔物が住んでいる。導入が計画通りにいかず、遅延に遅延を重ねるプロジェクトも少なくない。最悪の場合は予算オーバーで導入自体を断念する結果になることもある。導入が失敗するケースのほとんどは、そもそもプロジェクト方針や目的設定、プロジェクト計画や進行の問題である。これは一般的なシステム導入プロジェクトに共通する問題だが、本インサイトではCRM/SFA導入プロジェクト特有の導入後に失敗する理由に焦点を当て、話をしたい。
システム導入後の最終ステップである「システム利活用/業務改善」のには、大きく3つの関門が待ち受けており、この3つの関門を全て潜り抜けるのは容易ではない。
第一関門:データの質と量
CRM/SFAを導入する最終的な目的は、顧客との関係性を強化・継続し、結果的に売上・利益の向上を目指すことにあるが、一方で経営層は経営的な判断をするために営業にデータの入力を求める。システム導入前までは営業各個人が保有していた情報をデータとしてシステムに入力をする必要があり、単純に入力の負荷がかかる。その結果、営業がコア業務にかけられる時間が減少し、本末転倒な結果になる恐れがあるだけではなく、そもそもデータを入力しないという営業も現れる。
そもそも、CRM/SFAは基幹システムとは異なり、なくても業務が回るため、営業にとっては“なくても困らないシステム”なのである。この特徴は、経営層とプロジェクト推進部隊は全員把握しておく必要がある。営業からしたら単純に入力の手間が増えるだけに見えがちなシステムであるため、現場から不満が上がりやすく、データが思うように溜まらないことが多い。これまで私が支援してきたどのCRM/SFA導入プロジェクトでも、まずこのデータの量を増やす難しさに直面する。どうにか手を変え品を変え、様々な施策を繰り返しデータ量の壁を越えたとしても、次に待ち受けているのはデータの質の壁である。営業も徐々にデータを入力するようになったとしても、データの質の問題は別である。
最も確実にデータ量と質の壁を乗り越える方法は、データ入力の結果を評価制度や報奨制度に組み込むことである。この方法をとっている企業でシステム稼働後にシステムが形骸化することはまずない。しかし、なかなか評価制度や報奨制度を導入することが容易ではないことも多い。その場合は、CRM/SFA導入時にデータを入力する営業にとってのメリットを明確にする必要がある。
システム導入プロジェクト(特に昨今のDX推進において)は、トップダウンでの推進が不可欠である。一方で「経営層にとって便利なシステム」=「管理目的のシステム」と思われる危険も潜んでいる。そう思われてしまうと一気に現場のモチベーションは低下する。「なぜ、このデータ入力が必要なのか。」「それは営業にとってどのように役に立つのか。」まずは経営層とプロジェクトを推進部隊が、この質問に明確に回答できなくてはならない。そして、稼働後も地道に伝え続ける活動(啓蒙活動)を長きにわたり継続的に行うことが必要である。なぜなら、CRM/SFAは導入の効果が得られるまでに時間がかかるからだ。
引き合いから受注までの日々の案件情報が営業にとって有益な情報になるまで、日々地道にデータを入れ続ける必要がある。例えば、需要予測をして次に顧客にアプローチすべきタイミングや提案内容を知りたいとしても、営業案件のデータが数十件程度では予測をすることは不可能である。数百件、数千件と溜まれば溜まるほど、その精度は増す。最初は営業も熱量高めにデータ入力をしたとしても、予測可能になるまでに継続が辛くなってくる。経営層やプロジェクト推進部隊が継続して現場をフォローアップしながら、現場が成功体験をするまで、いかに現場と並走し続けるかが重要である。(システム導入の本質は泥臭いものであったりする。)
この方法を継続しても、データの質の問題は解決しない場合があるが、質はある程度、仕組みで向上させることも可能だ。例えば、可能な限り自由記載欄をなくす。自由記載が多いほど、営業の文章力やデータ入力へのモチベーションにデータの質が依存する。可能な限り、自動入力や選択式にするなどの工夫は必要である。どうしても自由記載欄が必要なことも多いが、自由記載欄をそのまま“自由”にしてしまうと、内容や入れ方までも個人の“自由”になってしまう。自由記載欄を設ける場合は、必ず入力ルールを徹底することも重要となる。ただし、入力ルールの徹底も容易ではない。ルール通りに入力しない営業が必ず現れる。
運用ルールが現場に浸透して完全に定着するまでは、必ず経営層やプロジェクト推進部隊が “現場と並走する”ことが重要になる。プロジェクト推進部隊は稼働開始まで見届けたら解散して良いわけではない。稼働後も継続して、現場に寄り添い並走することが重要であり、このスタイルを貫き、データ入力の結果が出ることで少しずつデータの質は上がってくるのである。
システムと運用が現場に完全に定着するまでがプロジェクトなのだ。
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